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第1 注意すべき現行法

1 賃料取立て行為と弁護士法

 不動産業者が、大家に対するサービスの一環で賃料の取立て行為をすると、弁護士法72条違反となる恐れがあるので注意が必要です。

弁護士法72条:非弁行為の禁止を定めた条文

「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

2 貸室の明渡に関する法的注意点

(1)判例によると、賃貸人が貸室明渡前に勝手に室内に入るのは、住居侵入罪(刑法130条)として犯罪となるので注意が必要です。

(2)契約終了時に貸主による借主所有物の廃棄処分を認める合意があっても、貸主が建物の入口を施錠し建物内の借主所有動産類を廃棄処分した行為について、貸主の不法行為責任が生じるとした判例があります。

(3)賃料保証会社がした違法行為(貸室を勝手に施錠し、借主が入居できない状態にするなど)について、貸主が保証会社に滞納賃料の取立てなどを頼んだような場合には、貸主に民法715条の不法行為に基づく損害賠償責任を認めた判例があります。

第2 注意すべき法律案

1 かつて「賃貸住宅における賃借人の居住の安定確保を図るための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立て行為の規制等に関する法律案」(以下「賃借人居住安定法」)という法案の議論が国会で審議されていました。

 この法案は、賃借人に対する不法な賃料取立てを防止して、賃借人のきゅじゅうの安定性を高めようという目的で提案され、国会では参議院で全会一致で可決したものの、衆議院で廃案となりました(平成24年1月頃)。

2 この法案では、「賃料等の悪質な取立て行為の禁止」(法案61条)が予定されていました。そこでは賃貸人(大家さん)や賃貸人から賃料等の取立てを任された者に対して、①人を威迫することの禁止、②その他、人の私生活もしくは業務の平穏を害するような言動の禁止、③鍵ロックの禁止(1号)、④賃貸住宅からの物品の搬出・保管の禁止(2号)、⑤夜間連続して電話・訪問等の禁止(3号)、⑥前記各禁止行為をすることを告げることの禁止(4号)が定められていました。

 現在は法案は成立していないため、上記のような取立てを明示的に禁止する法律はありません。しかし、上記のような行為は民法上の不法行為責任(民法709条、715条)として問題となることが十分に考えられます。

 賃貸人(大家さん)が上記のような行為をすると民法709条の不法行為責任を、賃貸人(大家さん)が取り立てを任せた人が上記のような行為をしても賃貸人(大家さん)が民法715条の使用者としての不法行為責任を負うということになるおそれがあります。

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