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保証会社の方へ

第1 建物明渡請求の必要性


 賃貸借契約保証会社(以下、「保証会社」といいます。)は、賃借人から委託を受け、賃借人の賃貸人に対する賃料債務を保証しています。その結果、賃借人が賃料を支払わず、さらに建物からも退去しない場合には、保証会社は賃貸人に対して、保証人としての賃料支払債務を負担し続けることになってしまいます。また、賃料不払いの事案では、賃借人がすでに賃借物件に居住していないケースや、第三者を居住させているケースも珍しくなく、このような場合には通常より明渡請求の手続が複雑なものとなる可能性があります。

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 たとえ、賃貸借契約に保証人が付いていたとしても、多くの場合保証人からの支払いは期待できないことから、明渡請求に時間を掛けるほど保証会社の損害が拡大してしまいます。

 そのため、保証会社としては、損害の拡大を防止する観点から、可能な限り早急に、賃借人に対する建物明渡請求を行っていく必要があります。

 

第2 建物明渡請求の解決手段


 建物明渡請求の方法としては、まず、賃借人に対して任意に建物を明け渡すよう交渉を行う方法が考えられます。この点、明渡交渉は、弁護士法72条にいう「一般の法律事件」に該当し、弁護士以外が代理することは法律上禁止されています。そのため、貸主から依頼された保険会社が代理して借主と明渡交渉を行った場合、後になって借主から合意が無効であると主張されるリスクがあります。したがって、明渡しの交渉は貸主本人が行うか、弁護士に依頼する必要があります。また、それまでは貸主が何度交渉しても明け渡さなかったにも関わらず、弁護士が介入すると借主が早々に諦めて明渡しを行うといったケースも散見され、この点は弁護士に依頼することのメリットと言えます。

 賃借人が任意の明け渡しに応じない場合には、裁判所に対して建物明渡請求訴訟を提起する必要があります。これによって勝訴判決を得れば、建物の明け渡しを強制執行することが可能です。訴訟手続は、原則として専門的知識を有する弁護士でなければ代理人となることができません(民事訴訟法54条1項本文)。また、貸主本人が行うことも不可能ではありませんが、訴状作成や送達手続、裁判期日への出頭等、複雑かつ煩雑な手続きが必要となるため、弁護士に依頼されることをお勧めします。

 なお、賃料不払いの状態が生じているからといって、賃借人に無断で賃借物件内に立ち入ったり、鍵を替えたりする行為は、住居侵入罪・器物損壊罪等に該当する危険があるため、絶対に避けるべきです。


第3 建物明渡請求を行うタイミング   


 賃貸借契約は当事者間の信頼関係を基礎として成立する契約であるため、賃貸人と賃借人の間の信頼関係が破壊されたと言えなければ賃貸借契約の解除は認められません。そして、信頼関係が破壊されたと認められるためには、賃料不払いであれば3か月程度に及んでいることが必要と考えられています。
 
 もっとも、損害拡大を防止する観点からは、賃借人が賃料の支払いを1回でも怠った場合には、建物明渡請求に向けた準備を開始しておくべきでしょう。具体的には、賃料滞納後1ヶ月の時点で、書面にて通知を行い、賃借人の賃料支払の意思の確認等を行っておくことが有益です。そして、賃料滞納が2か月に及んだ場合には、今後も不払いが続く可能性が極めて高いことから、居住状況の確認や訴訟手続に向けた資料の収集を開始するべきでしょう。
 
 そのうえで、賃料不払いが3か月に及んだ段階で、速やかに書面にて最終通告を送付し、これに応じないようであれば直ちに裁判所に対して建物明渡請求訴訟を提起すべきでしょう 。

 なお、保証会社が賃貸人に対して賃料相当額を支払った場合でも、賃借人が賃料を支払っていない事実に変わりないため、賃貸借契約の解除・明渡請求を妨げないとされています。

 

大阪高等裁判所 平成25年11月22日判決

本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は,保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し,賃借人が賃料の支払を怠った場合に,保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり,これにより,賃貸人にとっては安定確実な賃料収受を可能とし,賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすものであると考えられる。しかし,賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって,賃借人による賃料の支払ではないから,賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり,保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら,保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって,これにより,賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。


 
 

第4 顧問弁護士、アライアンス提携での事件処理


 保証会社は、業務の性質上、上記のようなトラブルを数多く抱えているかと存じます。そのようなトラブルに迅速に対応するためには、専門的な知識を備えた弁護士に依頼することが必要です。
 
 弊事務所は、複数の保証会社を顧問先に持ち、数多くの建物明渡請求訴訟に携わってきました(解決事例はこちら)。多くの経験に基づいたノウハウを有しており、時宜に応じた適切なアドバイスや問題の早期解決を図ることが可能です。さらに、顧問契約によるアライアンス提携も可能であり、この場合には一件一件にかかる費用を抑えられるというメリットがございます。

 保証先不動産の賃料未払い・建物明渡しにお悩みの、またはこれまで悩まれたことのある保証会社の方は、是非一度、弊事務所までご相談ください。

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